【写真展】『メキシカン・スーツケース』|難民の受け入れを拒否する国で難民とともにメキシコへ渡ったネガ4,500枚を観る

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1週間も経ってしまい今更感でいっぱいなのですが、先々週の土曜、5区にあるOSA Archivesで開催されていた『メキシカン・スーツケース』という写真展に行ってきました(先々週で終了)。天気が良かったから外出しようと思ったのに、結局屋内というバカな計画。ですが、結果的には晴れの日に行ったのは正解。

会場の真ん中は吹き抜けの天井になっていてその空間を囲むように、ロバート・キャパゲルダ・タローデビッド・シーモア(シム)の3人が撮影したスペイン内戦中の人々の写真が展示されていました。

 

 

4,500枚のネガの入った『メキシカン・スーツケース』

旅行などでは写真を撮りますが、だからといって写真雑誌を購読したり、写真展に足繁く通ったりするほど好きというわけではありません。この写真展もたまたま週末にやっているイベントとして情報を入手したから行ってみただけ。当然のことながら、「メキシカン・スーツケース?」「スペイン内戦なのに、メキシコ?」という状態。

 

スペイン内戦

スペイン内戦は、フランコ将軍率いる反乱軍と人民戦線政府との衝突。ドイツ・イタリアが反乱軍を、ロシア・メキシコが人民戦線政府を支援する一方、イギリス・フランスは内政不干渉の立場をとりました。ただ、国際義勇軍という形で、欧米の知識人たちが人民戦線側に加わります。アーネスト・ヘミングウェイジョージ・オーウェルなど、そして、キャパ、ゲルダ、シムです。

一見するとファシズムコミュニズムのような構図となっており、事実、知識人たちは「反ファシズム」の立場から人民戦線側につきました。しかし、現実というのは、単純な二項対立で整理ができないもの。スペイン内戦も然りで、人民戦線側は内部での分裂から参加していた知識人たちを白けさせる結果に。ヘミングウェイは『誰がために鐘は鳴る』で、オーウェルは『カタロニア讃歌』でその思いを綴っています。

そんな内戦は反乱軍の勝利という形で幕を閉じたのでした。

 

キャパ、ゲルダ、シムの目に映ったスペイン内戦

写真展会場の白い壁に飾られたモノクロの写真たち。そこには、前線で戦う兵士たち、負傷した市民など、キャパたちの目に映ったスペイン内戦がありました。4,500枚のネガ全てが引き伸ばされて額に納められているわけではなく、3〜40枚のネガから1枚ほどの割合だったでしょうか、ネガ全体の写真3〜4枚と数点の写真を一かたまりとして並びます。また、写真の下には、雑誌の記事などが収められたガラスケースが置かれ、それらの写真がドイツやフランスなど戦地から離れた場所でどのように伝えられたのかを追体験できるようになっていました。

連続する写真の中には、戦う兵士、負傷する市民、という非日常だけでなく、食事をする子供達、談笑する大人たちのような日常が混ざったりしており、その対比が非日常の連続よりもずっと戦争の惨さを語っているようでした。

 

メキシコへ渡った難民たち

展示された写真の中でも印象に残るものに荒野を隊列を組んで歩く人々の姿を撮影した写真があります。内戦により住処をなくした難民たちです。彼らが歩いて目指した先、それはスペインのお隣フランスでした。しかし、内政不干渉の立場を取っていたフランス。人道的立場から渋々受け入れざるをえなくなったものの、フランスにとってスペイン人難民たちは厄介者でしかありません。彼らは難民たちを収容所に入れ、不自由な生活を強いたのでした。そんな辛いその後を送った難民たちがいた一方、海を渡り遠く離れたメキシコに逃れた難民たちもいました。人民戦線側を支援していたメキシコ政府は、内戦により難民となった人々の受け入れを表明していたからです。そんな国で、2007年、発見されたのがこの写真展で展示されていたネガの入ったケースだったのです。

政府が正式に受け入れを表明し、同じ言語を話す国。見知らぬ土地で再出発をすることの大変さに変わりはありませんが、それでもメキシコに渡った難民たちの方が相対的にはその後幸せに暮らせたのではないでしょうか。この辺りは、映画『メキシカン・スーツケース』を観てみたいと思うところです。


映画「メキシカン・スーツケース」予告編

 

それでも難民は受け入れない

それにしてもこのブダペストで、内戦により彷徨う難民たちの姿を展示する写真展が開かれるなんて面白さ。オルバーン首相はそれでも難民割当て拒否の姿勢を崩してませんから。国民投票をせずに難民受け入れという重要なことを決めようものなら、国民からリンチにあっちゃうよ、というのが彼の主張。ハンガリーをはじめとする難民受け入れに消極的な国の言い分も分からなくはないです。ホントにこっちだって真面目にやってもEUからの支援があってやっとトントンな国なんだぞ、っと。

でも、そういうことを主張し続けるあたりが先進国の仲間入りを果たせない所以なのではないのでしょうか。この問題への取り組みを先進国仲間入りの通過儀礼と捉えて課題に対処していく姿勢を見せてほしい。

なんて他人事のように小学生の作文のような薄っぺらい意見を書くのは、少し前にホームレスになりかけたため。移民問題というのは、今救いを求めている人々を助けることと、今受け入れを進めたことで将来の国民が背負うことになる課題など、一般人が思いつくよりもずっとたくさんのことを様々な角度から検討を重ねた上で決められるべきことですから、選挙権もないくせに「難民を受け入れよう」という活動に足は踏み入れたりはいたしませんのであしからず。

 

 

『メキシカン・スーツケース』はまだ観ることができていませんが、別のロバート・キャパ関連ドキュメンタリ映画『In Love and War』(2003)を観ました。キャパの家族や友人のインタビューで彼の半生が綴られているのですが、当たり前のことながら焦点はキャパの半生でスペイン内戦の部分は一部でしかありません。それでもスペイン内戦についての部分はそれなりにありましたし、キャパがどのような人物だったのかを知るにはオススメの映画です。

 

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【参考】

メキシカン・スーツケース